MHA失客防止ベーシック講座 Ⅰ


つねに相手の気持ちを想像すること

お客様がサロンを変わる理由は、単純にサロンの技術力だけににあるのではない。

接客やサービスの中身、時間や料金など、さまざまな要因が絡み合う。

サロンにとっては常識でも、お客様にとっては非常識。

些細なことの積み重ねが大きな失客の要因につながることを意識しよう。


失客要因チェックリスト


電話


  1. 遅くとも3コール以内に出られる体制になっているか
  2. 電話に出るとき、きちんと名乗っているか
  3. 相手に聞き取れるように話しているか
  4. 早口になったり言葉を省略したりしていないか
  5. 必要以上に語尾を伸ばしたりしていないか
  6. あの、とか、ええととか意味のない言葉が多くなっていないか
  7. 相手の表情や気持ちをイメージしながら話しているか
  8. サロンのサービス内容や場所など分かり易く説明できるか
  9. 相手の要件や電話の主旨に応じて適切な対応ができるか
  10. 相手の名前、連絡先、時間など必要事項を復唱して確認しているか
  11. 電話の相手を必要以上に待たせることはないか
  12. 相手が切ったのを確認してから、受話器を置いているか
  13. 間違い電話に対しても丁寧に対応しているか

フロント


  1. 受付に必ず誰かがいるようになっているか
  2. いない場合のフォローはきちんととれているか
  3. 忙しさに任せて無愛想な表情で対応していないか
  4. 来店したお客さんに気がつかず待たせていることはないか
  5. 予約のお客様に対してそのまま待たせることはないか
  6. 待ってもらう理由や時間について丁寧に説明できているか
  7. 上着や荷物を預かるときには細心の注意を払っているか
  8. 収納はきちんと整理されているか
  9. 相手の用件や電話の主旨に応じて適切な対応ができるか

コミュニケーション


  1. お客様ときちんとコミュニケーションをとれているか
  2. 相手の希望や気になているところを聞き出す努力をしているか
  3. 相手の話を聞くことよりも、自分が話すことが多くなっていないか
  4. 相手の希望や要望をもう一度言葉に置き換えて確認しているか
  5. 希望を無視しスタイルや技術を押し付けていないか
  6. 写真などビジュアルツールでイメージを確認しているか
  7. 髪の悩みについてもきちんと相談に乗っているか
  8. 相手の外見や顔立ちを必要以上にほめていないか
  9. 髪質やコンディションの表現には気を使っているか
  10. 固定客だから安心してカンセリングを省略していないか
  11. 料金や施術内容などにわかりやすく説明しているか

接客


  1. 接客がマニュアル化していないか
  2. 自分の役割を認識しているか
  3. お客様によって接する態度が異なる
  4. 挨拶やサービスが過剰になてないか
  5. 気分によって接客態度が変わっていないか
  6. お客様からの疑問や質問にていねいにこたえているか
  7. お店の中で私語が多くなっていないか
  8. 手のあいたスタッフがブラブラしていないか
  9. 日頃から言葉使いを意識しているか
  10. 自分をアピールするために名刺を持っているか
  11. 商品を押し付けていないか
  12. ツメや手の手入れはできているか
  13. 装や身だしなみに清潔感があるか
  14. 飲み物や器が清潔に保たれているか

施術


  1. やたらと専門用語を使って説明していないか
  2. 提案できるスタイルの幅を広げる努力をしているか
  3. 提案するスタイルがマンネリ化していないか
  4. 前回のスタイルについての評価を確認しているか
  5. 次回や次々回の先を見たスタイルの提案はできているか
  6. 施術中に離れることが多くないか
  7. 離れる場合には、きちんと理由を説明しているか
  8. ヘルプに入るスッタフもきちんと紹介しているか
  9. お客様の言葉や表情の変化に気をつけているか
  10. 話に夢中になって技術がおろそかになっていないか
  11. パーマやカラーなど施術中の待ち時間のフォローはできているか
  12. 仕上げやスタイリングをわかりやすく説明しているか
  13. ホームケアやアレンジの方法についてアドバイスしているか
  14. 満足を確認して帰っもらっているか
  15. 施術時間の短縮に気を配っているか

✳️ 失客はどうして起こるの?

失客の原因はじつに単純明快。「お客様が、そのサロンに行く理由がなくなった」からです。
お客様が来店してくれるのは、心理的なものや経済的なもの、技術的なものや環境的なものなど、そのいずれか(もしくはすべて)を気に入ってのことだと思います。
特に、おもてなしや施術態度などの心理面に影響するものや、似合うヘアスタイルが提案できる、髪の悩みを解決できるといった技術的なものに関しては、お客様はとても厳しく見ています。サロンに求められている、主軸となるものだから当然ですね。そして、この2つが気に入らなくなったとき、お客様はサロンに見切りをつけます。これが失客です。
見方を変えれば、お客様はサロンの教育体制の良否や、スタッフの技術力の有無(つまり努力しているかどうか)など、経営者からスタッフを含めた人間の質を問うているとも考えられます。人間のすることですから、なまければお客様は来ないままだし、日頃から努力を積んでおけば、お客様は定着します。失客はこころがけ一つで防げるものなのです。

✳️ どうすれば失客は防げるのでしょうか?

そのお店の規模や客層によって対応策はまちまちです。ですから、「こうすれば必ず防げる」といったものを紹介することをはここではできません。しかし、どのお店にも同じように、ある程度の効果をもたらすものは存在します。「お客様対応マニュアル」です。

失客防止基本マニュアル


今の時代は常識的な「挨拶」「返事」「片付け」などを親や学校がしつけてくれません。したがって経営者がそれを教えなければ、彼らはお客様に対して対応することができない。これはサービス業に従事する人間にとっては致命的だと言えるでしょう。スタッフの一生の問題だからと言う信念を持って、少々厳しくしつけるようにがんばってください。
「あの美容師はダメだ」「あの接客は嫌だ」等とお客様に言われる前に、失客させないためのマニュアル教育が絶対に必要だと心から思います。マニュアルの力を馬鹿にしてはいけませんよ。
1.おもてなし編

・準備
開店2時間前に出勤して、店頭の清掃、植木の手入れを行う。トイレ掃除は、店長の仕事。

・用具
雑誌、タオル、クロスの確認。ひざ掛け、ガウンは清潔か。

・店内清掃
赤ちゃんがハイハイしても大丈夫か。鏡、天井、床、壁をチェック。

・お出迎えとお見送り
ドアを開けてお出迎え。挨拶とお辞儀の方法、返事の仕方、ご案内の方法を統一。お見送りは外まで出て行う。

・雨の日
雨の日に来店された場合は、乾いたタオルでお洋服を拭き、着替えのガウンを勧める。靴の替えを用意して、その間にお客様の靴を磨いておくとなお良し。

・お詫び
お客様を30分以上待たせてしまった場合は、手書きのお詫び状を送る。


2.美容技術編

1.お客様に「今のヘアスタイルで1番気に入らないところ」を聞き出してから写真やチャートなどをもとに似合うスタイルを提案する。提案は毎回違ったものを。

2.ヘアスタイルが決まったら、その日にかかる料金の確認を行う。

3.施術中はお客様と鏡の中で一体となり、お客様が美しくなっていく姿を想像をする。お客様が雑誌を読んでいたり目を泳がせているようでは美容師として半人前。


3.癒し編

1.シャンプー後の頭皮と肩の3分間マッサージ。反応が良ければ10分間程度の有料マッサージを勧める。
2.髪や頭皮の悩みを解決するための専門知識を学ぶ。これは必須。
3.話し方の基本を学ぶ。平易語からの脱皮。
4.身だしなみを整える。防止はかぶらない。
すり切れたジーンズは禁止。鼻、唇のピアスは外す。ラメ入りの化粧、臭いの強い香水も禁止。他にもたくさんあるが、あとはサロンの美意識を信じる。

4.聞き役編

1.家庭や勤務先の愚痴を聞く。聞き役に徹しながら、適切なアドバイスを送れるようになる。
2.お客様が自分を飾らずに、本音で過ごせるような会話術と声の調子を訓練する。

5.ありがとう編

お客様から「ありがとう」と感謝されるマニュアルをサロンで考える。
「来店時」「受付」「施術」「おじぎ」「挨拶」「返事」「片付け」「店内行動」「手が空いたらする仕事」「お見送り」「閉店」など。