MHA接遇ベーシック講座


接遇」はあらゆる人へのもてなしの心と態度、言葉づかい」を意味し、人として生きて行く上で、大切な触合う人々とのコミュニケーションに無くてはならないこととも言えるのです。

触合う相手の心に響き、誠実さや感謝を表現し、伝達する「おもてなし」の接客、接遇をするには接客、接遇「マナー」=「思いやりの形」を身に着けることが求められるのです。

おもてなし」は全ての接客、接遇に共通している相手を「思いやりの心」、「一期一会の心」と言動・態度を表す言葉です。

 快適なサービスの提供を考えたとき、様々なシーンでお客様と接する機会の多いアシスタントの役割は非常に重要です。ここでは、まず、快適サービスを実践する上で確認しておきたいサロンワーク上のルールについてご紹介します。アシスタント心得です。

✳️ 美容室の不満と不快

 我々美容業は、一般的にはサービス業に属すると言われています。サービス業は有形無形を問わず、様々な形で質の高いサービスを提供し、お客様に喜んでいただき、その代価を得ることで成り立っています。美容師の仕事にも質の高いヘアデザインの提供とともに、心和む会話や快適な空間でのリラクゼーションの提供も含まれているといえます。
 快適であること=不快をなくすこととは別次元ですが、日常のサロンワークの中で見落としがちなこと、技術追求に追われて忘れがちな「重箱の隅」とも言える細かい技術にまつわる落とし穴について考えてみました。美容室においてカットで1時間パーマやカラーで2時間の中で、お客様に「きれいになるための身体的我慢」を知らないうちにどれだけ強いてしまっているでしょうか。キャリアを問わず、プロとしてまず「今お客様はどう感じているのか」と言う想像力と、もし何か不満や不快に感じていることがあるとすれば、それを軽減させる思いやりが大切と考えます。
 今の美容師さん達のカットやカラー、パーマなど技術を追求する姿勢は非常に真摯ですし熱心です。ただし、それは「ヘアデザインの追求」と言う側面にのみ情熱が傾けられる傾向が強いのではないでしょうか。
 冒頭で述べたように我々美容業は、有形無形のサービスを提供することで対価を得ています。そしてお客様に喜んでいただくためにより質の高いサービスを追求していく時、デザインばかりでなく、お客様の身になって技術をもう一度見直す必要があるのではないでしょうか。
 そういった視点から技術の細かい部分をチェックしていくと、意外にお客様に不快な思いをさせてしまっていることが多いことに驚きます。また、その技術の大部分をアシスタントが担っいることに改めて気づかれます。その不快を感じる技術の細かい部分を取り除くことで、お客様の満足感は間違いなく上がるはずです。お客様からの「うまい」「へた」の評価もこういうところから判断されることもあるのではないでしょうか。
 不満に思っている事、不快に感じている事をお客様は予想以上に口にしにくいものです、ですからもう一度、自らの仕事を振り返って、まず「気づく」ことが大切です。
 これからご紹介する「重箱の隅」はほんの一部分です。まだまだ他にも注意する点はたくさんあるでしょう。ただ、今回の記事をご覧になってデザインの側面ばかりではなく、快適をキーワードに、皆さんなりに技術について工夫していくきっかけになれば幸いです。

✳️ プロアシスタントの10ポイント

①常に「お客様に喜んでもらうこと」を前提としているか。
美容師にとって、「お客様に喜んでもらうこと」と言うのは根本的な行動原理ではないかと思います。自分が関わる人全てに幸せになってもらいたいと言うのは、美容師なら誰もが感じていることだと思います。なぜ、美容師をやっているのか、どうして技術を磨く必要があるのか、すべてはここに原点があるのではないでしょうか。若いアシスタントたちには、ぜひ、こうした利他的な考えに立って日々仕事をしてもらいたいと考えています。

②お客様の全てを覚えているか。
お客様に喜んでいただくためには、お客様を知ることからスタートしなければなりません。その第一歩は、まずお客様一人ひとりのお名前を覚えることです。ケースによってはその人のライフスタイルまで知ることが求められますが、こうしたことをからお客様の親密感、安心感、信頼感につながっていくのではないかと思います。

③美容のプロとしてお客様の髪の情報を伝えているか。
お客様は意外と自分の髪について知らないものです。もともとの髪質やダメージの状態などをしっかり把握していない方のほうが多いのではないでしょうか。その点、髪のプロである美容師が主導して、シャンプーやブローを通じて髪についての正確な情報を伝えてあげる事は、お客様の信頼感を得るためにも欠かせないことだと思います。

④スタッフ間の情報を正確に伝え合っているか。
お客様についての個別の情報を次に関わるスタッフに正確に申し送りしているかは非常に大切です。伝えるべきことを伝えていないと無用の混乱を生むだけです。
本当はあってはいけないことですが、仮に予約で来店された客様を待たせるようなことがあった場合、どのくらい待たせたかを知らないスタッフが「大変お待たせして申し訳ありません」の一言もないままそのお客様をシャンプーにお通ししたらどうでしょうか。考えただけでもゾッとします。そういうことのないよう情報を正確に伝えたいものです。

⑤予約のお客様は「絶対待たせない‼︎」強い意志を持っているか。
これは⑥の内容と絡んできますが、時間の管理がしっかりできるようになれば、予約の客様を待たせるようなことがなくなるはずです。全体の中で個の動きをどう捉えるか。また、自分の技量をその中でどう反映させていったらよいのかを把握しておく事が、「絶対待たせない」ことにつながっていくのではないかと思います。

⑥店内の全てのタイムを把握しているか。
前項で言う個の動きを全体の動きの中でとらえると言う事は、裏を返せば、今誰が何をしているのかを把握することが必要になってきます。アシスタントがお客様全体の流れとスタッフ全員の動きを把握することで、サロンのオペレーションがより効率的になります。

⑦キメ細かい技術の見直しをしながら仕事をしているか。
サロンワークの中で常に向上心がないと、技術力は落ちてくるものです。ですから1人のお客様に入るごとに、あるいは1つの動作ごとにうまくやろうと言う意思を持ちながら施術することが大切だと思います。今回の「重箱の隅」にしてもそうですが、いかに気持ちの入った仕事をするかが、お客様に喜ばれる技術や接客を提供することの根本にあると思います。

⑧常に先の先を見て、今を判断し行動しているか。
例えば、ヘルプに入っている時、そのスタイリストのパターンを想像しながら、次の準備ができるかどうかということです。これができないと、効率の良い動きができませんし二度手間になってしまいます。ただし、これは仕事のパターン化とは違います。もちろんパターン化も必要ですが、大切なのは自分の頭で想像し、物事の因果関係を把握することです。

⑨クオリティと効率を考え工夫しているか。
前項と重複しますが、やはり自分の頭で考えることの大切さとともに、美容師であればクオリティと効率の両面を追求していくことの価値を考えていく必要があると思います。指示されたことだけをするのではなく、自ら工夫して改善して行く姿勢を持つべきだと思います。

⑩ご来店したお客様の全ての状況を把握しているか。
自分がシャンプーに入っていても、カット中のお客様の状況を把握していなければいけません。④にも⑥にも通じることですが、やはり全体の状況を把握することで、個人の力が全体におよび、サロンの総合力になります。スタッフ1人ひとりがこうした状況把握力を持つことが、今求められていると思います。

✳️ 「重箱のスミ」を再点検

技術にまつわるお客様の不快感を取り除くことをテーマに、「痛い」「暑い」「冷たい」「苦しい」などの人間の五感を基準にした項目を技術別に拾っていきます。

【 シャンプー 】

《 痛い… 》
♢長時間同じ姿勢による腰背中の痛み
♢シャンプー台で無理な姿勢による首の痛み、頭部のうっ血
♢強すぎる指の圧力(力の入りすぎ)
♢伸びた爪で頭皮をひっかく
♢お流し・シャンプー時のタオルドライで髪がツレてしまう
♢タオルターバンでピアスを引っ掛けてしまう
♢力強すぎるマッサージ
♢からんだ髪への無理なコーミング

《 熱い… 》
♢敏感になった頭皮へのお湯加減

《 冷たい、気持ち悪い… 》
♢濡れたままのシャンプークロス
♢シャワーの温度
♢顔にかかるお湯、泡

《 かゆい、苦しい… 》
♢ガーゼをかけたときの痒み
♢シャンプークロスの過度な首の締め付け
★ 爪の伸びの頭皮への指の当て方

☆ 本来気持ちの良いはずのシャンプーが不快になる原因

♢爪:ちょっと伸びた爪で知らず知らず頭皮を引っかいている。慣れに任せて以外に気づきにくいことです。爪の伸びと当たりの角度は重要です。十分注意しましょう。

♢力、指圧、温度:お客様の頭皮のコンディションを無視した力強いシャンプーやお湯の温度も同様に辛いものです。その時々のコンディションに合わせて力の入れ加減をコントロールしたり、少し温度を下げるなどをしてお客様に不快感を与えないように充分配慮しましょう。

※痛い、熱いの状態で数分間我慢を強いられるのはかなりの苦痛です。頭皮のコンディションはもちろん、パーマやカラーリング後のお流しの際も、お湯の温度には配慮しましょう。

♢髪のツレ:当然、長くてダメージが大きいほどツレやすくなります。髪がツレると一種ヒステリックな痛みを感じます。まず、髪がツレると言うのはどんな状態なのかを知ることが大事です。そして感触で感じられるようになること。相モデルで定期的にチェックし、テクニックを上げることで対応します。

★ シャンプー椅子の角度
(バックシャンプーは除く)

🆗 シャンプーボールと身体が水平だと首への負担は少ない。

🆖 シャンプーボールと首の角度が水平以上に傾いた状態では、首は痛く頭もうっ血し、背中や腰への負担も加わる。

※ お客様の身長や座る位置によって、微妙に変わる首の位置。椅子の高さを調整したり、座り直してもらうなどちょっとした声がけが大事です。他にクロスの締め方や外し方、シャンプー椅子の倒し方や起こし方などでも、ちょっとした声掛けに、お客様は仕事の丁寧さを感じます。

【 パーマ&カラー 】

《 痛い …》

♢余分な数本の髪をロッドに巻きつけてしまうことによる髪のツレ
♢強く深すぎるゴム、スティックのテンション
♢パーマ剤の目や肌への液だれ
♢クレンジング(リムーバー)時のこすり過ぎ

《 熱い…》

♢加温器、チーマーの温度設定

《 冷たい…》

♢パーマ剤塗布時のひんやり感

● 痛くないワインディングを心がけよう

パーマ時のわワインディングは、頭髪に一定のテンションをかけられ、その状態でロッドアウトまで数10分放置されます。巻いた時点でツレたりしていると、2液塗布時のタオル交換等のたびに、さらに痛い思いをして辛いものです。お客様に『パーマは痛いもの」と言う固定観念があるとしたら、プロとしてなくしていく工夫をする必要があると思います。

★ゴムかけ、スティック

ゴム掛けの強さ、深さ、スティックのさす位置によって微妙に変化するテンション。強すぎるテンションは不快の素です。

★痛いパーマの原因として

ロットの大小にかかわらず束として一定のテンションがかかればツレる痛みは感じないはずですが、1本から数本の髪が違うテンションで引っ張られることで起こります。クロスかけ等のゴムかけやスティックを刺すことによってさらに頭皮に対するテンションは強まり痛みも増します。

対策としては、
・根元には少しゆとりのある巻き納め方をする(根元のかかりはステムで調整)。
・正確にスライスを取る(均一なテンションになるように薄めのスライスを取る)。
・スティックを刺した後お客様に確認する。
・巻かれた根元を触ってツレていないかを確認する。

【 ブロードライ 】

《 痛い… 》

♢ダッカールの取り外し時の髪のツレ
♢ブラシテンションによる髪のツレ、頭の揺れ
♢ブラシの歯先で必要以上に頭皮をこする
♢セット時のきつすぎるゴム、ピン

《 熱い… 》

♢ハンドドライヤーによる熱

★ブラシ(デンマン、ロール)の入る角度による歯のあたり
ブラシの歯が頭皮に当たってお客様が痛い思いをしていることを忘れがちです。デンマンなどのブラシの歯は鋭角です。頭皮への当たりに気をつけましょう。

♢ブラシ回転時に指で挟んで引っ張ってしまう

※自分の癖をよく把握して工夫すること

♢ブラシへの髪の絡まり、引っかかり

※ブローをする前によくとかす。ダッカールでしっかりセクションを取る。

★ダッカールについての不快体験

急いでいる時や集中力の欠けているときにやってしまいがちなことで、意外に多くの人が経験することです。毛量の多い方に無理にとめる時、細かくセクションを取る。さす方向、角度に注意するなどをして、極力不快体験のないようにしましょう。

♢ダッカールのヘッドにかかった数本の髪の毛を指で挟んだまま引っ張ってしまいがち。よく確かめてからはずす。

♢ダッカール支点の軸の部分に髪の毛が挟まったまま引っ張ってしまいがち。気づかずにお客様の髪の毛が抜けていることがあります。かなり痛いはずです。

★ハンドドライヤーの角度と熱の当たり方

※頭皮に対して平行の角度だと熱くない。

※頭皮の丸みに対して平行以上の角度は熱が直接当たってしまうのでかなり熱い。

【 カット 】

《 痛い… 》

♢欠けたコームの歯先の当たり
♢頭皮への強いコーム圧
♢耳へのコーム当たり
♢セニング、スライド、レザーによるカット時の痛み

《 気持ち悪い… 》

♢カットした髪の払い残し

★カットコーム

♢頭皮への強いコーム圧…カットコームもブラシと同様歯の先は思ったより鋭くなっています。頭皮を引っ掻くようなシェービング圧や角度は自分で気づかない場合が多く見られ、知らず知らずお客様に痛い思いを強いてしまっています。

♢欠けたコーム…ハサミで削ったり落としてかけたコームの歯先は、首筋など皮膚の柔らかい部分を傷つけたり、引っかかれた痛みを残します。自分の肌でこまめなチェックをしましょう。

★シーザーレーザーなど

ここ数年カット技術の流れとしてブラントオンリーは減少し、スライドやレザー、セニングなど毛量調節が中心になってきています。それに伴いお客様の『我慢』も増えてきているような気がします。
・髪の状態としては…「健康毛」より「ダメージ毛」、「ウエット」より「ドライ」
・ハサミの入る角度は…「鋭角」より「鈍角」
・切れ味は…「切れる」より「切れない」
これらの条件が揃えば揃うほど、刃と毛髪の接地面の摩擦抵抗が大きくなり、痛みの原因になります。今、再度「痛くないカット」というものを真剣に考えてみるべき時ではないでしょうか。

♢ドライでのチェックカット

ブラント…歯の欠けがなければ痛くない。
ストローク…ハサミの入る角度や切れ味など使い方で差がある。

♢スライドカット

専用のハサミがオススメ。ウエットでもハイダメージほど痛い。特にネープは無理な角度で入ると痛い。細かい開閉で軽減できるが質感は変わる。

♢セニングカット

抜けが良いセニングシザースなら比較的痛くない、切れにくく抜けが悪いとツレて痛い。

♢レーザーカット

ドライではダメージ以前にかなり痛い。十分なウェットでカートリッジはまめに交換しましょう。

★その他…動きの鈍いトリマーやバリカンの裏を使ってのトリミングも要注意

✳️接遇13ステップ

女性には3回ほめる。男性には3回おだてる。 

1.受付け     一言付けて挨拶 

2.待合い    無視しない 

3.ご案内    腰は低く、次の席に座って落ち着くまで 

4.カウンセリング    左ポジション 

5.シャンプー    先にしっかり洗う所を聞く 

6.カット    ヘアケアの話、スタイル説明、技術説明 

7.パーマ・カラー    仕事の仕方、薬の説明、その印象 

8.パーマ・カラー待ち    1回以上確認、薬がしみていないか 

9.トリートメント    根元と毛先の違い、ダメージ、ヘアケア、トリートメント説明 

10.ブロー・セット    スタイリングの仕方、スタイリング剤の説明 

11.技術終了からレジまで    他の技術者がほめる 

12.レジ    名刺の渡し方、ゆっくりと 

13.お見送り    ひと声添える