MHA経営ベーシック講座 Ⅰ


現在、日本全国のサロンの売り上げは下降気味だと思われます。今は、他店に負けないサロンを作る時期だと考えます。1度来ていただいたお客様に必ず次も来てもらえるようなサロンを作り上げる。それから新規客を呼び込むことをします。愛されるサロン作りが重要です。

✳️ お客様の4つの心理

お客様の退店時の心理には4つあります。1番避けなければならないのは「不満」。不満を抱えて帰られるお客様は二度と来ないし、友達にサロンの悪評を言いふらします。つまり潜在顧客も失ってしまいます。
二つ目は「やや満足」。このお客様は再来店します。ただ、次に来店されるまでに口コミやクーポンマガジン等で他店の情報が入らなければ、また来てくれるというレベルです。
三つ目は「満足」。このお客様は必ず次も来てくれる。友達を誘ったり、別の友達にも「あそこはいいよ」と情報を発信してくれます。
四つ目は、満足を越える「感動」。感動されたお客様は一生サロンに来てくれます。ただ、人それぞれ感動する的が違います。ではどうしたら感動客が増えるのでしょうか。それはお客様を「感じて動いてあげる」ことです。お客様がサロンに来店されてから退店されるまでの間、サロンやスタッフによるサービスや施術から受けているお客様の心の状況を「感じる」ことです。

✳️ 不安から不満へ

美容師からお客様が離れていく理由には、まず聞き出し不足があります。これはカウンセリング不足のことです。本当のカウンセリングとは、その日サロンに来たお客様がどんなヘアスタイルに変えたいかお聞きする時間です。お客様の望むヘアスタイルにできなければ喜んでもらえません。ですから、技術不足も原因の1つに挙げられます。
そして、お客様とスタイリストの接客が合わなかったという人柄の問題もあります。さらに、お客様に飽きられてしまった。例えば、いつも同じヘアスタイルを希望するお客様にこちらから「前回と同じでよろしいですね」と言う言葉を言ってはいけません。「前回と同じ」を希望してきたお客様が「新しいヘアスタイルにしようかな」と思ったとき他のサロンに行きます。なぜならそのスタイリストは、前回と同じヘアスタイルにしか勧めてくれないので、サロンに飽きてしまうのです。
また、美容室からお客様が離れていく理由について。例えばお客様が13時に予約をして来店されたとします。「少々お待ちください」と言われたきり何のお声掛けもなく待たされて、施術が始まったのは14時。「もうこのサロンには行かない」と不満を抱かれてしまいます。これはサロンのお客様に対応する流れが悪いと言うことで、サロン全体の責任となります。
お客様は入店から退店までの間、いろいろな不安を抱いています。つまり「小さな不安の積み重ねが、サロンや美容師への不満に変わる」ということなんです。

✳️ 満足への10項目

お客様の数を増やすために必要な事は、「お客様の不安を取り除き、安心から満足へ導く」ことです。それには10項目あります。

①電話対応能力の向上。電話は相手の顔が見えない分、サロンのイメージが大きく左右されます。電話対応で悪い印象を与えたら、お客様は不安を残したまま来店することになります。そうしたお客様はサロンの悪いところを探します。電話対応が良ければサロンの良いところを探してくれます。

②お出迎えをおろそかにしない。お出迎えはお見送りよりはるかに大事です。なぜなら新規客ほど「どんなスタイリストが担当してくれるのだろう」と不安な気持ちで来店されるからです。スタイリストは自分が担当する新規客が来ればわかります。でもサロン側だけがわかっていてもいけません。そのお客様がサロンに来ているということを、サロンが分かっているとお客様にお伝えすることが必要です。そこでまず、お客様に「本日は私が担当させていただきます」と担当スタイリストが挨拶をする。自分の担当スタイリストがわかっているだけで、お客様は安心した気持ちで待っていてくれます。また、自分の指名客が来店したら、その時の作業を一旦中断して挨拶に行ってください。「あと5分であちらのお客様のカットが終了します」と自分の今の状況を伝える。それをせずアシスタントに「担当が来るまで少々お待ちください」と多くのサロンでは言わせています。「少々」かどうかわかっているのは担当スタイリストだけです。この「少々」がお客様を不安にさせています。

③仕上がりスタイルのビジュアル提示。口で説明しただけで、本当に仕上がりのヘアスタイルがお客様に伝わっているでしょうか?不明瞭なままだとお客様の不安は増します。ヘアカタログはヘアスタイルに迷ったお客様に提案するだけではなく、仕上がりのイメージをお客様に把握してもらうためにも使えます。

④カウンセリング終了時の料金提示とアップタイムを明示する。仕上がりのイメージを確認したら、具体的な施術のメニューが決まります。カット&カラー、毛先が痛んでいるのでトリートメントもしたほうが良いと提案した時、お客様はそこでも不安になります。「今日財布の中に1万円しか入ってないけど足りるかな」と。サロンではメニューが決まった時点で値段を伝えます。支払いの時まで料金が分からないとお客様は不安なんです。カット&カラーの料金もわからないのに、トリートメントを勧められても断ります。そして大切なのはアップタイムのお知らせ。「このメニューですと◯時くらいに終わりますが、大丈夫ですか」と聞くことが大事です。14時に予約したお客様は、14時にスタートしたかったと思ういますか。「夕方には家に帰っておきたいから14時に予約しないと」と考えているでしょう。お客様の考えをサロンが理解する必要があります。

 
⑤バックミラーのフル活用。技術が始まってお客様はまた不安になります。「自分の思い通りのヘアスタイルになっているか」と。多くのサロンでは施術が終了した時の1度だけしかバックミラーでお客様に後姿を見せていません。もっとバックミラーをフル活用して後姿を見せてあげましょう。それだけで不安が取り除けますから。

⑥時間のお知らせ及びお声掛けの徹底とお客様を褒める。アシスタントはお待ちのお客様に雑誌をもって行く時、担当スタイリストがあと何分で施術できるか伝える必要があります。そうするとお客様は安心して待っていられます。また、お客様を褒めるのもサービス業の基本です。バックや靴、どれか1つで良い。お客様はその洋服を好きで着ているから、嘘でもいいので褒めてあげるんです。そして褒めるためにはファッションに敏感でないといけません。お客様が流行のものを身に着けていても、それを知らなければ褒めてあげられません。サロンにいる間、お客様をどれだけいい気持ちにさせるか、いかに気持ちよく帰らせてあげるかがポイントなんです。
⑦ホームケアのアドバイス。お客様はヘアーデザインが出来上がった後、「このヘアスタイルを家でも作れるか」という不安を持ちます。そこでホームケアの方法を丁寧に教えてあげます。

⑧ご来店周期に合わせた次回の来店提案。気に入ったヘアスタイルになってお客様が退店される時、このヘアスタイルはいつまで保てるか気になります。そんな時は「いつも3ヶ月に1度ですよね。次回も3ヶ月後にしましょうか。その時、今日のヘアスタイルはこんな風に変わっていますから、次回はこうしましょう」と説明します。こう言う約束があるかないかで次回の来店率が変わってきます。

⑨スタイリストおよびアスタントの服装、ヘアスタイルのチェック。スタッフの服装がサロンのセンスが問われます。全員ダサイ格好で営業していたらお客様は「選んだ店、間違えたかもしれない」と思ってしまいます。そしてスタッフのヘアスタイルはサロンの動くヘアカタログです。つまりお客様はそのサロンの技術レベルを、スタッフのヘアスタイルで判断します。

⑩スタイリスト及びアシスタントの顧客対応能力の向上。サロン内で1番強い気持ちでいらっしゃる方はお客様です。「私はお金を払うのよ。何が何でもきれいにしてほしい」と。スタッフの顧客対応能力とは、そのお客様の思いを超えた思いで、お客様に接客するということです。「自分たちはお客様からお金をもらってる。何が何でも気に入らせるんだ!」と、スタッフ全員の営業における意識統一を図ることが大事です。

✳️ 美容業界の4本柱

美容業界はかつて「技術」と言う1本の柱のみで支えられていました。しかし、お客様が技術以外に様々な物を求めるようになり1本の柱だけではサロン経営を続けていく事はできない時代に突入しました。そこで、今、美容業界は4本の柱で支えていかなければなりません。技術開発、技術指導と言う「技術」の柱2本と、人材育成、顧客満足と言う「人」の柱2本です。ここで注意しなければいけないのは柱の1つだけが伸びてもバランスが悪くなり、経営は傾いてしまうということです。
まず、技術開発のポイントは3つ。
①他サロンとの違いが出るような工夫を行う。②「これでいい」と自分の技術に自己満足しない。③スピードアップ。
続いて、技術指導のポイントは2つ。
①スタッフがスタイリストデビューした後のレベルアップカリキュラムを作る。自分の責任でお客様を初めて任されたこの時期が、彼らは一番不安を感じています。一昔前のスタイリストは、わけのわからないまま失敗を繰り返して、多くのお客様を失いながらだんだん一人前になっていました。でもそのやり方では通用しません。なるべく失うお客様の数が少なくて済むように、徹底的に経営者や先輩が指導しなくてはいけないのです。
②アシスタントは現場でしか成長しない。毎晩、個人練習して、ウィックに向かって黙々とロッドを巻いているスタッフは、お客様の前でも無言でロッドを撒きます。それで良いでしょうか。サロンスタッフとして働く以上は、お客様に「このスタッフにロッドを巻いてもらってよかった」と思われないといけない。楽しくない施術をお客様は望んでいません。毎日お客様に接してこそ本当の技術は進歩します。
そして人材育成のポイントは1点。経営者よりレベルの高い人材は育ちません。スタッフが成長する時、経営者はその少し先まで成長していればいいんです。そうすれば結果的にサロン全体のレベルが上がる。サロン全体が伸びていくと言うことなんです。
最後に顧客満足。「もう今月でサロンを辞めたい」と思っているスタッフが、お客様を幸せにしたいと思って心からの接客ができるでしょうか。顧客満足は社員満足に比例しています。そして社員満足は、今のサロンの姿が映ります。今のサロンの姿は、経営者の姿が映ります。顧客満足のツールは経営者と言うことです。経営者がしっかりサロンとスタッフのことを考えたら、それはそのままサロンとスタッフに反映され、顧客満足へとつながります。だから経営者は顧客満足のために、この4本の柱をきちんと考えなければいけません。
こういうことを実践しながら、風に吹かれても飛ばないようなサロン作りをすることが大事なんです。目先の利益を追求しても、それはその場しのぎ。長い目で見たサロン作りの基盤を作る方が賢明だと思います。

✳️ 経営者の姿 

これからの時代、どんなサロンが残ってどんなサロンが残らないのかといいますと、それは簡単な話です。世の中に必要な美容室は絶対残ります。立地も規模も関係ありません。では、サロンにとって世の中とは何か?それはスタッフとお客様です。この2つから必要と思われていたら、絶対にサロンは残ります。そういうサロンをつくってください。そして愛される経営者になってください。先程も述べましたように顧客満足も社員満足も、そのルーツにあるのは経営者の姿です。スタッフに人気投票をさせて、自分に一番表が入らない経営者は危ない。つまりスタッフから愛されていないんです。ですから「うちのスタッフはみんな自分のこと大好き!」と胸を張って言えるような経営者になってください。

✳️ 近江商人の10教訓


商売の基本はお客様にあり。

売り手よし、買い手よし、世間よし。


近江商人の商売の10教訓


1.商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり


2.店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何


3.売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる


4.資金の少なさを憂うるなかれ。信用の足らざるを憂うべし


5.無理に売るな、客の好むものを売るな、客の為になるものを売れ


6.良き品を売ることは善なり、良き品を広告して売ることは更に善なり


7.紙一枚でも景品はお客を喜ばせるものだ。

 つけてあげられるものの無い時は笑顔を景品にせよ


8.正札を守れ!値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ


9.常に考えよ、今日の利益を。今日の損益を明らかにしないでは寝につかぬ習慣にせよ


10.商売は好況、不況はない。いずれにしても儲けねばならぬ


※下記は近江商人が興した主な企業です。
商社…伊藤忠商事、丸紅、トーメン
百貨店…高島屋、大丸、西武
紡績…日清紡、東洋紡
その他…日本生命、ヤンマーディーゼル、西武グループ、ワコール

✳️ 経営力とは…

・組織をまとめる力

・まかせる仕組みを作る力

・人材を育成する力

・優秀な人材を採用する力

・共感を生む力

・行動力

・統率力

・時間を管理する力

・お客様を集める力

・お客様を育む力

・商品を売る力




✳️ 松下幸之助から学んだこと